2025.03.31
Alp Shop & Studio
田久保博樹さん・いりすさん
しごと
2021年に韮崎市に移住し、その約2年後に全国の作家さんの器やアウトドアグッズなどを販売するお店『Alp Shop & Studio』を複合商業ビル『アメリカヤ』内にオープンした田久保さんご夫妻。おふたりは何度も韮崎に足を運ぶ中で、まちの人の温かさやまだまだ何か楽しいことが起こりそうな余白が残っているところに魅力を感じたと言います。

韮崎中央商店街の複合ビル『アメリカヤ』の2階で『Alp Shop & Studio』を営む田久保いりすさんと博樹さんは、2021年4月に東京から韮崎に移住してきました。いりすさんはフリーランスでカメラマンの仕事をしながらAlpの店頭に立ち、博樹さんは東京で会社勤めをしながらの二拠点生活で、週末は韮崎でお店を手伝っています。おふたりが韮崎に興味を持ったきっかけは、アメリカヤに関する記事を読んだことでした。
「私は自然がとにかく好きで、東京に気軽に行ける距離にある田舎に移住したいと考えていました。長野、山梨、静岡のどこかが良いと考えていた時に、たまたまアメリカヤが紹介されている記事を見つけて『こんなに面白い場所があるんだ!』と興味を持ち、夫と一緒に韮崎市のオンライン移住相談会に参加してみました」
「僕も山が好きなので地方に拠点を持つのには賛成でした。まちづくり関係の仕事をしていることもあり、韮崎のまちがアメリカヤというビルの復活をきっかけに盛り上がっているという動きはとても興味深く感じました。相談会に参加して移住・定住相談員の方々のパワフルさや本当に楽しそうにまちのことを語ってくれる様子にも惹かれ、『とにかく一回行ってみよう』ということになり、すぐにレンタカーを借りて遊びに来ました。東京から2時間程度の距離なので、気軽に来られるところも良いなと思いました」

初めて韮崎を訪れた田久保さんたちは駅の近くのゲストハウスを予約し、アメリカヤ近辺を散策しました。移住・定住相談員と会い、移住者が営むカフェでお茶をしながら店主と話をしたり、アメリカヤ横丁でお酒を飲んだりして過ごし、帰る頃にはすっかりこのまちを気に入っていたと言います。
「駅周辺にいろいろなお店があるから歩いているだけで楽しいし、出会う方々が親切で気持ちの良い方ばかりですごく好印象でした。まちから見える富士山、八ヶ岳、南アルプスもとても綺麗で感動し、帰りの車内で『韮崎かなり良いんじゃない?』と盛り上がりました」
おふたりはその後も市内のゲストハウスやお試し住宅を利用しながら何度も韮崎に足を運び、いろいろな人に話を聞いたり、車で周辺のまちまで出かけてみたりしました。
「来る度に新しいお店ができるので通っていて楽しかったです。もっと人口が多いところだとすでにまちが完成していてコミュニティに入り込む隙がない感じがしてしまうのですが、韮崎は余白が残っていて、まだまだ何か面白いことが起こりそうなところに魅力を感じました。それに加え、高速道路のインターもあるし、特急電車も停まるし、自然を思いっきり味わえる北杜市にも県庁所在地の甲府にも30分ほどで行けるという立地の良さも魅力的で、自分たちにとってここより条件が良い場所は他にないだろうと思いました」

「器好きは母の影響なんです」といりすさん。

愛くるしいフォルムの木彫りのくまは、北海道旭川市の佐藤憲治さんの作品。
韮崎への移住を決意した田久保さんたちは、定住促進住宅家賃助成制度を活用し、市営の定住促進住宅に住むことにしました。しばらくは東京と韮崎を行き来する生活をしており、その頃は器のお店をはじめることは全く考えていなかったといりすさんは語ります。
「韮崎で暮らしていく中で、『もっとまちと関わりたい』という想いが徐々に強くなってきて、拠点としてフォトスタジオをつくることを考えました。アメリカヤをリノベーションしたIROHA CRAFTの千葉さんに相談してみたら、『ちょうどアメリカヤの2階で面白いことをやってくれる人を探している』というお話があり、『あんなに良い場所を借りられるなら何かやりたい!』と思ったことがお店をはじめるきっかけでした。韮崎のまちは飲食店が多く、もう少し物販のお店があったらもっとまちに滞在できて楽しいのになと思っていたこともあり、ただのフォトスタジオではなく昔から好きだった器を中心とした物販のお店を兼ねてやってみようと決意しました。そこから約半年間は、全国の作家さんたちに自分たちの想いや韮崎のまちのことをプレゼンをして商品を集めたり、知人に内装デザインをお願いしたり、webサイトをつくったりと大忙し。市の起業支援補助金も活用しながら準備を進め、2023年9月に『Alp Shop & Studio』をオープンしました」

博樹さんがデザインしたロゴマークは、個性豊かなアイテムが集まっている様子を表現。

店奥にはOWL MILSのサングラスなどのアウトドアグッズやアパレルアイテムが並びます。
アメリカヤが紹介されている記事を見て韮崎を知った田久保さん夫妻は、偶然にもそのきっかけの場所でお店をはじめることになりました。器を中心に、アウトドアグッズ、古本、クラフトビールなどおふたりの好きなものを詰め込んだお店には、市内外から幅広い年齢層の人が足を運んでいて、まちに新しい風を吹かせています。
「お店は木〜日曜日の営業で、写真の仕事と両立しています。気軽に話せる場所ができたことで写真のお仕事の相談をいただくことも増えましたし、アメリカヤには市内外からさまざまなお客さんが来るので店頭にいて楽しいです。おすすめの場所を聞かれることも多いので、他のお店を紹介することもありますし、他店からの紹介でうちに来てくださる方も大勢います。韮崎はお店同士の仲がよく、ゆるりとまとまっていて、みんなで良い方に向かっていこうという空気が感じられるのでとても心地良いです」
お店をオープンしたことでまちの人や他のお店の人との繋がりも深まり、韮崎ならではの心地良さを実感したいりすさん。移住したばかりの頃はまちを楽しむ側でしたが、今は楽しませる側としての目線を持つようになり、「お店の空間をもっと活用していきたい」と考えるようになりました。

この辺りではなかなか手に入らない全国の個性豊かなクラフトビールも販売。

器はオンラインショップでも販売しています。
「閉店後のお店にみんなで集まって、『大人の部活動』のようなことができたらいいなと考えています。ちょっとお酒を飲んだり、工作をしたりしながら交流できたら楽しいと思うんです。私たちもお店をはじめる前は、『まちの人との繋がりを深めたいけど方法がわからない…』と思っていたので、同じように感じている人が気軽に集まって繋がれるような場になればいいなと思います」
田久保さんたちは自分たちも楽しみながら、まちの人や移住者の気持ちに寄り添った場づくりを考えています。このような活動がまちの文化として定着していけば、韮崎に移住した人のその先にある暮らしは、より豊かなものになっていくでしょう。
最後におふたりから移住を検討している方へメッセージをいただきました。
「“移住”と言うと大事に感じてしまいますが、“引っ越し”と考えれば少し気が楽になるかもしれません。引っ越した先でさまざまな出会いがあり、今後もまちが発展していくと考えるとワクワクしませんか?韮崎には、きっと思っている以上に助けてくれる人がたくさんいます。私たちもいろいろお伝えできることがあると思うので、移住を検討している方はぜひ一度遊びに来てみてください」

Alp Shop & Studio
山梨県韮崎市中央町10-17 アメリカヤビル2F
木曜・金曜13:00〜17:00
土曜・日曜11:00〜18:00
月曜〜水曜定休(不定休あり)