2026.07.24
ジェラート屋mucu
大谷里菜さん
しごと
本町でジェラート屋を営む大谷さんは、お子さんの小学校入学を機に2024年に韮崎市に移住しました。空き家バンクで見つけた賃貸物件に移り住み、その約1ヶ月半後にはジェラート屋を開業。知り合いゼロからのスタートで地域の人や農家さんとの関係を築いてきた大谷さんに、移住に関するエピソードをお聞きしました。
ジェラート屋mucuは、本町の商店街に佇む老舗の醤油・味噌屋である井筒屋醤油の敷地内の建物に、2024年5月にオープンしました。店内のショーケースには、オーナーの大谷里菜さんが季節の果物やハーブなどを使用してつくる色とりどりのジェラートが常時6種類並んでいます。それらは全て保存料・着色料・卵不使用で作られており身体にも優しく、「素材そのもののおいしさを味わえる」と幅広い世代から人気です。
大谷さんは韮崎に移住する前は家族で東京に暮らしながら、キッチンカーでジェラートの販売を行っていました。岡山県の自然豊かな地域の出身ということもあり、いつかは自然に近い場所で子育てをしたいと考えていたそうです。そして、上のお子さんが小学校に入学するタイミングで本格的に移住を考えるようになりました。
「南アルプス市に子どもの自己決定を尊重し体験学習を重視する教育方針の小学校があり、そこに子どもを通わせたいと思いました。その学校に通える範囲内で、ジェラートのお店ができそうな場所を探していたら、隣の韮崎市にたどり着いたんです。まちなかにお店がたくさんあって、ここなら知り合いが一人もいない状態からのスタートでも、お客さんに来てもらえるかもしれないと思いました」
大谷さんはいろいろなまちに足を運びましたが、駅の近くに新・旧両方のお店が並び、歩いて楽しめそうなまちは、この辺りでは他にはなかったとのこと。森の中にあり、車でわざわざ来てもらうようなお店よりも、まち歩きの途中でふらりと寄ってもらえるようなお店にしたいと思っていたので、韮崎の商店街はそのイメージにぴったりだったそうです。
「韮崎のまちの雰囲気が気に入り、当時ニコリの一階にあった移住・定住相談窓口に相談に行きました。対応してくださった相談員のお二人がすごくパワフルで、そのパワーに引き寄せられた部分も大きかったと思います。当時は不安な気持ちもあったので、『大歓迎!』という雰囲気の対応が嬉しかったのを覚えています。まちのことや使える補助金のことなども教えていただき、韮崎市の移住者への支援の手厚さにびっくりしました」
さまざまな情報を得て、韮崎への移住を前向きに検討し始めた大谷さんは、韮崎市商工会にも開業についての相談に行きました。そこで今の店舗物件を紹介され、一気に話が前に進んだと言います。
「ちょうど井筒屋醤油の山寺さんが商工会に『敷地内の物件を誰かに使ってほしい』と相談していたみたいで、不動産屋サイトには未掲載の物件でした。ジェラート屋をするにはちょうど良いコンパクトさで、駅から歩ける立地で周りにはカフェや飲食店もあって、すごく良い環境だなと思いました。小学校の合否が出るのは12月中旬だったので、結果次第ではもしかしたら移住もできないかもしれないという未確定な状況でしたが、山寺さん夫妻が『急いでいるわけでもないからそれでも大丈夫ですよ』と言ってくださって、とても助かりました」
無事にお子さんの小学校入学が決まってからは大忙し。旦那さんの転職先を探すのと並行して家を探し、空き家バンクのサイトで見つけた一軒家の賃貸物件にすぐに見学を申し込み、見学したその日に即決。空き家バンクのリフォーム補助金を活用して床の張り替えなどのプチリノベーションを行い、お子さんの小学校入学直前の3月末に無事、韮崎での暮らしをスタートしました。
「3月末に移住してきて、5月にはジェラート屋をオープンして…その頃の記憶が曖昧なくらい毎日すごくバタバタしていましたが、なんだかんだ順調に進められたのは市や商工会のサポートがあったからだと思います。店舗物件は数年前にリフォームされていてきれいな状態だったので、知り合いの大工さんの力を借りながら自分たちで少し手を加えた程度で、スムーズにお店を始めることができたのもラッキーでした。起業支援補助金や事業所賃貸借料補助金も活用させてもらって、本当にありがたいなと思いました」
実際にお店を始めてみると、大谷さんの想像通り、まち歩きの途中に立ち寄ってくれるお客さんがたくさんいました。たまたまお店の前を通りがかって気になって入ってきてくれる人もいれば、他店からの紹介で来てくれる人も多かったそうです。
「近くのお店の人たちがお客さんに紹介してくれたり、まちの人も応援してくれたりして、本当に温かいまちだなと感じました。農家さんとのつながりも徐々に増えてきて、畑にお邪魔して生産の様子を見せてもらったり、ジェラートに使う果物の品種について相談させてもらったりすることもあります。少し傷が付いたりして出荷できない果物も、ジェラートという形で活用させてもらうことができてありがたいです」
mucuのジェラートにはさまざまな果物やハーブなどが使われていますが、近くで生産されているものはできるだけ近くで仕入れ、農園や地域の魅力もお客さんに紹介するようにしているそうです。楽しそうに話す大谷さんの表情を見ていると、移住したことで仕事においてプラスになることがたくさんあったことが感じられますが、日常生活の面ではどのような変化があったのでしょうか?
「韮崎に移住してからは、自然と触れ合う機会がかなり増えました。もともと家族でキャンプや山登りに行くのも好きだったのですが、都内からだと行き帰りするのも大変で…こっちにいると自然の中にいる時間をたっぷり取れるのが最高です。公園で遊んだり、川遊びをしたり、たまに静岡や長野までお出かけすることもあります。海と山の全く違う環境のどちらにも日帰りで遊びにいける立地が便利なんですよね。韮崎は普段の買い物にも困らないし、自然との距離も近くて本当にちょうど良いまち。移住して良かったなと思います」
韮崎に暮らしていることを最大限に活かして、暮らしも仕事も思いっきり楽しんでいる大谷さん。ご家族もこの環境を気に入って、のびのびと暮らしているそうです。「このまち好きかも」と感じたら、まずは誰かに話を聞きに行ってみる。その行動力を持つことが、暮らしをより楽しい方へと導くコツなのかもしれません。